RPAツールによる作業の効率化・自動化

2024年 1月15日 Posted 野々瀨(フロントエンドエンジニア)

RPA(Robotic Process Automation)ツールによる業務効率化・自動化が注目されています。
RPAはパソコン上の作業をロボットによって自動化する技術で、定型業務や大量データ処理などを効率的に処理できます。 具体的にRPAとはどういうものなのか、「Power Automate Desktop」の使い方も含めて簡単に紹介していきます。

RPAとは

RPAとは、Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略称で、パソコン上で行う作業(業務)をロボットで自動化する技術のことです。定型業務や大量のデータを扱うときに相当な時間を要する作業などをロボットによって自動化することができます。

作業(業務)を自動化することで、他の作業に集中することができたり、人的ミスの軽減、時間(工数)のコスト削減、人手不足の解消できたりなど、たくさんのメリットがあります。

半面、非定型業務や相当複雑な処理、複雑な判断が必要になるものには向いていません。

自動化の例(活用事例)

RPAは業務システムへの入力やメールの一括送信、伝票やレポートの作成、データ収集などが行えます。また、Webサイト制作の現場では、中・大規模Webサイトの静的Webページを分解して、CMSへ取り込むといったこともRPAで行うことができます。

RPAツール

RPAツールは、RPAの自動化を行うためのロボットを開発し実行するためのツールです。ほとんどプログラミングの知識がなくても、あらかじめ決められた動作のパーツを組み合わせることで、ある程度の動きを再現するロボットを開発・実行することができます。LEGO(R) MINDSTORMS(R)のEVシリーズ(初代はRCXのROBOTICS INVENTION SYSTEM(RIS))や、Nintendo Switchソフト「なびつき!つくってわかるはじめてゲームプログラミング」のようなものが近いでしょうか。

さまざまなアプリケーションの操作に対応しているので、Microsoft OfficeはもちろんWebブラウザーや業務システムなどの操作を行うことができます。

より複雑な処理は、VBAなどツール側に対応されている言語を用いて開発を行います。

RPAツールは次のように幾つか存在します。

製品名メーカー/開発元種類補足
WinActor NTT トライアルフル機能版実行版  
UiPath UiPath FreeProEnterprise  
Microsoft Power Automate Microsoft Power Automate Desktop
Power Automate for desktop
Microsoft Power Automate Desktop
 
BizRobo! RPAテクノロジーズ BizRobo! miniBiz
Robo! LiteBiz
Robo! Basic
 
Automation Anywhere Automation Anywhere 不明  
マクロマン コクー    
Automator Apple   標準搭載

機能や使い勝手、費用やサポートなどさまざまな違いがあります。

導入の費用

料金はツール(提供元)によってさまざまです。無料・有料のものもあり、個人や商用利用によっても変わってきます。例えば「RPAツール」でご紹介した製品では次のような感じです。

製品名ライセンス費用詳細ページ
WinActor 20万~100万円/年
 * 無料のトライアル(体験版)あり
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UiPath 個人利用:無料商用利用:$420/月~
* Pro版は無料のトライアル(体験版)あり
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Microsoft Power Automate Power Automate Desktop:無料(* Microsoft アカウントのみ)
Power Automate:1,880~12,500円/月
* Power Automateは無料のトライアル(体験版)あり
詳細ページへ
BizRobo! 初期費用:20~50万円、90万~720万円/年
* 無料のトライアル(体験版)あり
 
Automation Anywhere 不明
* 無料のトライアル(体験版)あり
 
マクロマン 無料 詳細ページへ
Automator 無料 詳細ページへ

RPAツールを軽く触れてみる

RPAツールを軽く触ってみようと思います。ここでは「Power Automate Desktop」(無料版)を例にご紹介しようと思います。

Power Automateとは

Power Automateとは、Microsoft社が提供しているクラウドで利用するRPAツールです。コネクターと呼ばれるさまざまな機能やサービスと連携したロボットの開発を行います。また、開発したロボットはスケジュールによる自動実行を行うことができます。

ライセンスを購入することで利用することができます。そのため、企業アカウント・有償アカウントが必要です。

Power Automate Desktopとは

Power Automate DesktopはPower Automateの一つで、デスクトップで利用するRPAツールです。Windows 10またはWindows 11に限り無料で提供されています。Power Automateの場合は、契約料金プラン(ライセンス)の内容によってPower Automate Desktopを利用できる場合があります。Power Automateとは違い、コネクターが利用できなかったり、開発したロボットはスケジュールによる自動実行を行うことができなかったりと違いがあります。

利用するにはMicrosoft アカウントが必要です。

Power Automate Desktopの前提条件

個人利用の場合は、Microsoft アカウントが必要です。企業アカウント・有償アカウントの場合は、特定の料金プラン(ライセンス)で利用している必要があります。

また、次のシステム環境(ハードウェア)を満たしている必要があります。

 最小限推奨
プロセッサー 2 コア以上 1.00 GHz 以上 2 コア以上 1.60 GHz 以上
ストレージ 1 GB 2 GB
RAM 2 GB 4 GB
GPUアクセラレーション - 有効

Power Automate Desktopについての詳しい内容については、次の参考ページをご覧ください。

参考:https://www.microsoft.com/ja-jp/biz/smb/column-power-automate-desktop.aspx

Power Automate Desktopのインストール

Windows 10はMicrosoft Storeよりダウンロードしインストールすることができます。Windows 11は初期状態でインストールが済んでいます。詳しくは次の参考ページをご覧ください。

参考:https://www.microsoft.com/ja-jp/biz/smb/column-power-automate-desktop.aspx

使い方

Power Automate Desktopの簡単な使い方をご紹介します。ここではExcelの簡単な操作のみを実装してみたいと思います。

起動

デスクトップ上にショートカットがあればそれを押すか、スタートメニューを開き、検索入力欄に「Power Automate」と入力し、「最も一致する検索結果」の最上位に表示された「Power Automate」を押して、起動します。

しばらくしますと、サインインを要求されますので、メールアドレスを入力し「サインイン」ボタンを押します。

「Microsoft アカウントへサインイン」ダイアログが表示されますので、パスワードを入力し、「サインイン」ボタンを押します。

始めて起動する場合はようこそウィンドウが表示されますので、「次へ」ボタンを押します。

「国/地域の選択」を自身の環境にあわせて選択し、「開始する」ボタンを押します。

ツアーを行うかどうかを聞かれます。必要がなければ「スキップ」ボタンを押してください。

これで起動が完了です。

ロボット(フロー)を作成

行いたい処理をまとめたロボットを作成します。Power Automate Desktopではこれをフローといいます。

画面左上にある「新しいフロー」を押します。

「フローを作成する」ウィンドウが表示されたら、「フロー名」を入力し「作成」ボタンを押します。

しばらくしますとメインとは別にフローデザイナーというフローを編集する画面が表示されます。フローデザイナーは主にアクション、ワークスペース、変数と三つのペインから構成されています。

アクションペインは処理する機能の一覧です。ここから使いたい機能をワークスペースへ設定していきます。

ワークスペースペインは実装する一連の処理内容です。アクションから機能を組み合わせて実装していきます。

変数ペインは一時的に値を保管しいろいろな箇所で共通して使えるようにします。

処理の登録と設定

アクションから処理したい機能を見つけ出します。機能の数が多いですので、検索入力欄からキーワードを入力しますと、一覧が絞り込まれて表示されます。例えば「Excel」と入力すれば、Excelに関連した機能の一覧が表示されます。

アクションペインから「Excel の起動」をワークスペースへドラッグ&ドロップするか、ダブルクリックします。「Excel の起動」はその名前のとおりExcelアプリケーションを起動します。

設定画面が表示されたら、「Excel の起動」を「空のドキュメントを使用」を選択し、「保存」ボタンを押します。「空のドキュメントを使用」は新規にExcelを作成します。「次のドキュメントを開く」を選択することで、既に存在するExcelファイルを開くことができます。

ワークフローにアクションが設定されました。

アクションペインから「Excel ワークシートに書き込む」をワークスペースへドラッグ&ドロップするか、ダブルクリックします。「Excel ワークシートに書き込む」はセルに値を設定することができる機能です。

設定画面が表示されたら、「書き込む値」にセルに設定する値、「列」に選択するセルの列番号、「行」に選択するセルの行番号を入力し、「保存」ボタンを押します。列はアルファベットで指定できますが、行と同じように番号で指定することもできます。例えば「A」なら「1」、「B」なら「2」という感じです。

ワークフローにアクションが設定されました。

アクションペインから「Excel の保存」をワークスペースへドラッグ&ドロップするか、ダブルクリックします。「Excel の保存」はファイルへ保存する機能です。

設定画面が表示されたら、「保存モード」を「名前を付けてドキュメントを保存」に選択、「ドキュメント形式」を「Excel ブック(.xlsx)」を選択します。「ドキュメントパス」の参照ボタンを押して、ダイアログから保存先へ移動しファイル名を入力して「開く」ボタンを押します。「保存」ボタンを押します。

ワークフローにアクションが設定されました。

アクションペインから「Excel を閉じる」をワークスペースへドラッグ&ドロップするか、ダブルクリックします。「Excel を閉じる」は開いているExcelを閉じます。

設定画面が表示されたら、「Excelを閉じる前」を「ドキュメントを保存しない」に選択し、「保存」ボタンを押します。「Excelを閉じる前」は閉じる前に行う処理を選択することができ、閉じる前に保存をすることもできます。今回は別にファイルへ保存するアクションを設定していますので、特に何も行わないようにします。

ワークフローにアクションが設定されました。

これでExcelの起動、セルへの値設定、保存、閉じると一連の処理の設定が完了しました。

フローの実行

フローが完成したら実行してみます。フローデザイナー画面からワークスペース上部の右上付近にある右向きの矢印アイコンを押します。このボタンを押しますと、フローが実行されます。

フローが設定したアクションの順番に処理されていきます。

完了すれば、元のフローデザイナー画面へ戻ります。

フローの保存

フローデザイナー画面からワークスペースの右上にあるフロッピーディスクアイコンを押します。このボタンを押すと、フローが保存されます。保存先は、Microsoft アカウントのOne Driveへ保存されます。

すごく簡単にご紹介しましたが、Webサービスからデータを取得しExcelへ1行ずつ保存していくといったことも可能です。また、レコードという機能を使って操作を記録するといったことも可能です。さらにVBScriptなどでプログラミングし、高度な処理を行うこともできます。

最後に

RPAはロボットの開発に少々時間や処理や、複雑な内容によってはプログラムを書く必要がありますが、日々の作業を効率化できればそれだけ時間の短縮ができます。もし周りにRPAについて知識をお持ちの方がいれば、一度相談してみてもよいのではないでしょうか。